蚕(おかいこさん)の幼虫を撫でた記憶、冷たくてツルツルでした

幼い頃に母と

養蚕業を営む親戚を

訪ねた記憶があります。

 

年上の従兄弟が

私の世話をしてくれました。

 

水辺で遊んだ後

葉っぱをたくさん集め

 

「いいもの見せてあげる」

 

と連れて行ってくれたのが

蚕(かいこ)の小屋でした。

 

従兄弟と私が摘んだのは

蚕のご飯(桑の葉っぱ)

だったのでしょう。

 

「こっち、こっち」

と見せてくれたのは

生まれたばかりの

大量の蚕たち。

 

愛しいものを呼ぶ

優しい声で

 

「おかいこさん」

 

と教えてくれました。

 

怖い。

気持ち悪い。

逃げたい。

 

と思いました。

 

小さくて赤い

ミミズのようなものが

ザワザワ、ザワザワと

うごめいている。

 

赤い、というのは

私の歪んだ記憶で

白い、はずです。

 

孵ったばかりの蚕は

真っ白ではなく

少し色がついていたのかも。

 

怖くて気持ち悪くて

逃げ出したいのに

逃げられない。

 

優しい従兄弟を

悲しませたくなくて。

 

母に叱られたくなくて。

 

そこで記憶が

一旦途切れ

 

気づいたときには

私の手の平に

 

ぷっくらと白い

おかいこさんが

載せられていました。

 

指先でそっと撫でると

冷たくてツルツルで

 

このまま、ずっと

撫でていたいようでした。

ずっと後になって

繭を茹でて絹糸をとる

と知ったとき

 

あの、おかいこさんも

茹でられてしまったのか

と不思議な気持ちでした。

 

神やんは今朝

白絹のようなものを

まとっていたので

 

こんな思い出が

蘇ったのかもしれません。