神やんと月子は
サキさんの問題よりも
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月:ソニーの盛田さんを尊敬しててね。日本に来たとき、ウォークマンをもらったって。世間ではIBMが絶対的に優位だったけど、最終的にはデザインが良くて使いやすい商品が選ばれる。自信と確信があったと思う。
神:盛田って人も、半ば神だな。
月:そうか…。でね、はじめはうまくいかなかったけど、自分と自分の才能を信じてた。できると知っていた。けど経営とか組織って、あんまり得意じゃなかったのかも。結局は経営陣として招いた人に追い出されてしまう。
神:なるほど。
月:世界を変えようとしていたこと。コンピュータは個人の道具じゃなく、人と他人をつなぐものだと思ってたこと。これ、すごい発想だよね。ネットワークっていう概念のはじまり。ジョブスを追い出した人も、後で自分の誤解?失敗を認めてるんだよね。
神:ふむふむ。
月:聞いてんの?
神:聞いてますけど。
月:けど?
神:先行きが見えず。
月:だんだん見えてくるから。
神:はいはい。
月:トイストーリーが大ヒットしたのも、ジョブズの投資支援があったからなんだって。アップルから離れている間に、ジョブスは億万長者になっていた。そのうちマイクロソフトのウインドウズが、どんどん力をつけてしまった。
神:ほーほー。
月:アップルがピンチになって、やっとジョブスは自分の会社に戻ったの。その時期に、有名なスケルトンのiMacがバカ売れした。今までパソコンなんて買おうと思わなかった人も「オシャレ!」「カッコイイ!」「欲しい!」って買ってしまうデザイン。
神:デザインなぁ。
月:デザインは愛を生む。
神:はぁ?
月:美しいものは、愛される、っていうか。
神:スティーブ・ジョブズが、そう言った?
月:いや、言ってないと思う。私がそう思った。
神:なるほど。
神:おまえさ、意味わかって言ってる?
月:意味はわからない。でも何かを感じるんだよね。人間の心を動かす何か。神やんの上司が、私に伝えようとしたこと。
神:わっかんねーな。
月:新しい技術とか、経済とか経営とか、そういう話じゃないと思う。
神:そりゃそうだろ。
月:iPodが売れた理由を考えてみてよ。小さくて性能がよくて、カッコイイの。色は白。それも純粋でスタイリッシュな、特別な白。
神:特別な白、かぁ。
月:そう。んで、大量に生産しない。供給を少なくすることで、価値を高めたの。みんなが欲しくて欲しくて、たまらない気持ちになった。
神:まぁ、何となくわかる。
月:物を作るだけじゃなくて、売る場所もデザインしたんだよね。手で触れて感じられる場所。カッコイイ物を売るために、カッコイイお店まで作ってしまった。体験して買う。電子機器っていうより、アートの売り方でしょ。
神:アートなぁ。
月:お店のコンセプトは「信念の神殿」で、商品は「崇拝」の対象。まさに教祖と信者をつなぐ「宗教芸術」だよね。
神:おまえ、そういうの好きなわけ?
月:ぜんぜん。関心ないし。
神:だろ?で、どうしてテンション高いわけ?
月:ファンを作るってことかな、と思ってさ。発想を転換するヒントっていうか。相手の欲しがるものを差し出せば、お互いハッピーになるのかも。
神:わかったような、わかんねぇような。
月:癌の手術を公表したときにね、「死は命あるものにとって至上の発明だ」みたいなことを言ってるの。自分のために生きなさいって。あと「Stay hungry.Stay foolish」って。いいよねぇ。
神:ますます、わかんねぇ。
月:まぁ聞いてよ。それからiPhoneができるわけ。これって電話じゃないんだよね。世界とつながる「気分」が買える。実際につながっているのかも。アプリっていう概念が普及したのも、ジョブズの仕事だと思うよ。
神:世界とつながるアプリねぇ。
月:市場を独占しているわけじゃないのにね。買わない人たちも、心のどこかでiPhoneに魅了されてる。
神:魅了かぁ。
月:そう。発明家ではなく、デザイナーでもなく、ビジネスマンですらなかった。ものごとをクリアに見る人。
神:で?
月:で?
神:オレにどうしろって?
月:多分さ。
神:多分?
月:人間を知る。人間の欲望を知る。そういうこと?
神:わからん。
月:だってさ、上司さんは私を経由して何かを伝えようとしているわけでしょ?神やんに直接ジョブスを研究しなさい、って言わない理由があるよ。
神:わかりにくいんだ、あのひと。
月:きっと意味がある。
神:だろうなぁ。
月:ゆっくり探そうよ。
神:あぁ。
月:とりあえず、ミサさんに返信しなきゃね。
神:あぁ。
月:また来るから。
神:あぁ。
月:あぁ、あぁ、って。
神:あぁ。いや、とにかく頼む。
月:はいよ。じゃ、またね。
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つづきは、また。